場所前のトピック
- 大関・貴景勝、カド番
- 関脇・照ノ富士、大関再昇進に挑戦
初日 3/14(日)
感染症の影響により、通常開催地の大阪ではなく、東京・国技館での開催。
注目力士は、直近2場所で24勝を挙げている関脇・照ノ富士。
大関昇進の目安まであと9勝だが、最低でも二桁勝って序二段からの大関復帰を成し遂げられるか。
横綱・鶴竜は左太ももを負傷し、全休。
照ノ富士 ー 北勝富士
左からのはず押し、右の喉輪で照ノ富士の上体を起こす北勝富士。下がらない照ノ富士は相手の右肘を跳ね上げて、左を差して四つに組み止める。
北勝富士がおっつけて下手を切りながら前に攻めようとしたところを下手投げ。
照ノ富士は目標の大関復帰に向けて幸先の良いスタートを切った。
白鵬 ー 大栄翔
途中休場した昨年七月場所以来の本場所の土俵に上がった白鵬。
右で張って大栄翔の当たりを止めてから左をのぞかせると、一気に土俵際まで寄り立てる。大栄翔は逆転を狙って右から突き落とすが、白鵬は倒れ込みながらも寄り倒し。
白鵬は速攻相撲で先場所覇者の大栄翔を下し、1勝目。
大関陣は、貴景勝は阿武咲を押し出し、朝乃山は宝富士を突き落としで破った。正代は御嶽海に寄り倒されて黒星スタート。
中日まで 〜3/21(日)
白鵬は、2日目の宝富士戦後に右膝痛が悪化し、3日目から休場。
優勝争いの先頭に立ったのは、中日に照ノ富士との一敗同士の対戦に勝った小結・髙安。懐に入って右の差し手を深くし、照ノ富士に捕まらないよう揺さぶりながら寄り切った。
力強い押し相撲に加えて、四つに組んでも堅い守りで凌ぎながら、徐々に自分の形に持っていく我慢の相撲を取り、初日の明生戦の敗戦だけに留めている。
次に、二敗で照ノ富士、千代の国が並ぶ。
照ノ富士は合口の悪い阿武咲(5日目)、髙安に敗れたが、四つに組み止めて力の違いを見せつける相撲を取り、大関復帰に向けてまずまずの序盤戦。
三敗は、大関の貴景勝、朝乃山など12人が並ぶ。 正代は4勝4敗の五分。
10日目 3/23(火)
9日目は一敗、二敗勢は全員勝ち、迎えた10日目。
照ノ富士 ー 志摩ノ海
照ノ富士は狙いの右差しは防がれたが、それでも前に圧力をかけて相手を土俵際に追い込む。志摩ノ海は頭を付けて脇を固め、左に回り込みながらおっつけてなんとか照ノ富士の攻めをしのぐ。
照ノ富士も前に攻め続けるが、志摩ノ海も右からのハズ押しで抵抗する。
焦れた照ノ富士が強引に体を預けて前に出たが、志摩ノ海の左突き落としに膝から崩れた。
照ノ富士は勝ち越しならず3敗目。
貴景勝 ー 髙安
激しい突き押しの応酬となった両者。髙安が一旦左に回り込んだが、貴景勝が張り手を交えながら再度突っ張り合い、頭四つの展開に。
互いの出方を伺いながら膠着すること2分間。先にしびれを切らしたのは貴景勝。右から蹴返しにいったが、髙安はそれを待ってましたと言わんばかりに左を差して右上手も引き、上手投げで大関を転がした。
髙安は熱戦になっても冷静さを失わず、9勝目。貴景勝は6勝4敗。
千代の国も敗れたため、二敗力士は消えた。
10日目を終えて、一敗でトップの髙安と後続との差は2つに広がった。髙安は初優勝へ向けて俄然有利な展開へ。
11日目 3/24(水)
照ノ富士 ー 隆の勝
立合いで左腕をたぐり、右のまわしをガッチリ引いた照ノ富士。バランスを崩して横を向いた隆の勝を一気に寄り切り。
照ノ富士は連敗せずに8勝目を挙げて、まずは勝ち越し。
正代 ー 髙安
左を固めていった髙安だが、先に左を差した正代に両差しを許す。なんとか左をこじ入れようとしたが、その瞬間に大関が回り込みながら右からの突き落とし。
髙安は2敗となり、独走に待ったをかけられた。勝機を逃さなかった正代は6勝5敗。
妙義龍 ー 朝乃山
髙安の敗戦により、自力優勝の可能性は無いものの、再度賜杯が見えてきた朝乃山。
踏み込んで右四つに組み止め、大関の形に。前へ寄り立てながら最後は左上手を引いて寄り切り。
朝乃山は万全の相撲を取って、勝ち越しを決めた。
髙安は二敗目を喫したが、依然単独トップは変わらず。
星の差1つの三敗で朝乃山と照ノ富士、平幕の飛猿の3人が追いかける。
なお、今場所休場していた横綱・鶴竜が引退を発表。来場所は白鵬が8年8ヶ月ぶりに一人横綱となる。
12日目 3/25(木)
髙安 ー 北勝富士
髙安は胸から当たり、相手の左の突きを追っ付けてはねのける。
北勝富士が再び左から突き起こしに来るが、髙安はもう一度右から追っ付けると、北勝富士はバランスを崩して横向きに。そこを逃さず押し出し。
髙安は昨日の敗戦を引きずらず、二桁となる10勝目を挙げた。
照ノ富士 ー 玉鷲
照ノ富士は右から絞って相手の突き放しを防ぎながら、前へ圧力をかける。左を差して下手を掴んだが、玉鷲が差し手をたぐって小手投げを打ち、照ノ富士の下手を切った。
間隔が僅かに空くと、玉鷲が突き押しで逆襲し、ジリジリと後退する照ノ富士。
俵に足が掛かったが、玉鷲の右の喉輪を左から突き落とし。
照ノ富士は苦しみながらも9勝目を手にして、大関復帰へ王手。
御嶽海 ー 朝乃山
昨日同様左から鋭く踏み込んで、朝乃山得意の右四つ左上手の体勢に。御嶽海の上手を切りながら、休まずに攻めて寄り切り。
朝乃山も盤石の相撲で3敗をキープ。
貴景勝 ー 隠岐の海
立合いで頭から当たって一気に押し込む貴景勝。こらえる隠岐の海は左に回り込むが、貴景勝はしっかりついていき、相手の引きに乗じて押し出し。
貴景勝は8勝4敗となり、カド番脱出。
髙安は二敗を守り、次点の三敗は朝乃山、照ノ富士の2人に。
優勝争いは3人が有力候補となって、残り3日へ。
13日目 3/26(金)
髙安 ー 若隆景
立合いで突っ張りを選択した髙安。対する若隆景も一歩も下がらず下からあてがいながら右からの追っ付け、突っ張りで応戦する。
髙安が左を差してまわしを掴みかけたが、若隆景が下がりながら阻止する。相手の後退に乗じて髙安は押し込むが、若隆景は左にかわして凌ぐ。
再度突っ張り合いになって、もう一度髙安が土俵際まで押し込むが、若隆景も土俵際で左に回り込んでかわす。
当たり合って三度髙安が土俵際まで押し込むが、若隆景は右腕を手繰って右を差し込んで、前に攻め返す。髙安は差し手を抱え込んで小手投げを打ったが、相手を呼び込んでしまい、若隆景が体を密着させて寄り倒し。
髙安は何度も土俵際に追い込んだが、攻めきれずに痛恨の3敗目。
この時点で髙安、照ノ富士、朝乃山の3人が並ぶ展開に。
貴景勝 ー 朝乃山
尻上がりに調子を上げ、優勝争いの先頭に並び立った朝乃山。大関同士の一番。
突き起こして差させないようにする貴景勝に対して、朝乃山は突っ張り返して組み止めるスキを伺う。しかし、貴景勝も徹底して突き放し、朝乃山に捕まえさせない。
凌ぐ展開の貴景勝だったが、右から突き落として相手のバランスを崩し、左の喉輪で攻め込む。朝乃山は喉輪を外しながら、右からの突き落としで貴景勝を横向かせる。
そこを勝機とみて押し込んでいったが、土俵際で貴景勝が叩き込み。
朝乃山はトップに並んだ矢先に4敗へ後退。右足一本で残った貴景勝も9勝4敗。
正代 ー 照ノ富士
ついに髙安に追いついた照ノ富士は、勝てば大関復帰を手中にする大事な大関戦。
立合いで左前まわしを引いた照ノ富士。左をのぞかせた正代に攻める機会を与えず、一気に走って寄り切り。
文字通りの完勝で照ノ富士は10勝目。大関復帰は当確となった。正代は7勝6敗。
髙安が負けたため、賜杯レースの先頭は三敗で照ノ富士と髙安が並ぶ展開。
四敗で朝乃山、貴景勝、若隆景、碧山、英乃海の5人が星の差1つで追いかける大混戦に。
14日目 3/27(土)
碧山 ー 若隆景
四敗同士の一番。
碧山の突っ張りを下からあてがって凌ぐ若隆景。右をのぞかせた若隆景だったが、その差し手を碧山が抱え込んで小手投げ。
碧山は二桁に乗せる10勝目。
髙安 ー 飛猿
優勝争いの先頭に立ったまま千秋楽を迎えたい髙安。
髙安は組み止めに行くが、固くなったのか思うように体が動かず、飛猿は腕を前に出して凌ぐ展開。それでもかいくぐって左四つ右上手に組み止め、左下手も引いて髙安充分の体勢に。
しかし髙安はそこから攻める素振りも見せない。右はバンザイになり苦しい状況の飛猿だが、右を髙安の首に巻いて右から蹴返しを打つ。
その瞬間髙安は前に出て勝負に出たが、土俵際で飛猿が逆転を狙って首捻りを繰り出し、両者土俵の外へ。
髙安の右膝が土俵に付くのが、飛猿の体が落ちるよりも早く、軍配通り飛猿の勝ち。
髙安は優勝への緊張なのか本来の動きが見られず、連敗で4敗に後退。この時点で照ノ富士が単独トップに。
正代 ー 貴景勝
立合いから突き起こしていく貴景勝。正代が右から突き落としていなすが、動きをよく見て反応し、突き放し続けていく。上体が浮いた正代をそのまま押し出し。
貴景勝は4敗を守った。正代は7勝7敗。
照ノ富士 ー 朝乃山
単独首位を守れるか。それとも大関が引きずり下ろすのか。
立合いで両手突きにいった朝乃山だが、脇が空いてしまい照ノ富士に右差しを許す。照ノ富士は腕を返して上手を遠ざけ、朝乃山は掬い投げで振りながら同じく上手を警戒する。
しかし掬い投げで朝乃山の体が密着したところを、照ノ富士は逃さずに左上手をガッチリ。照ノ富士が引き付けて前に出るところを、大関は下手投げで体を入れ替えて凌ぐのが精一杯。
再度照ノ富士が右の腕を返して相手の上体を起こし、前に出て寄り切り。
照ノ富士は力強さだけでなく、巧さを見せつけて11勝目。朝乃山は5敗目となり、優勝は消滅。
大詰めの優勝争いは、照ノ富士ただ一人が三敗で単独首位。
星の差1つの四敗で、貴景勝、髙安、碧山の3人。
照ノ富士は本割で勝てば優勝。
貴景勝は自力で引きずり下ろして巴戦に持ち込めるか。髙安と碧山は直接対決で勝って巴戦出場の可能性を残したい。
千秋楽 3/28(日)
髙安 ー 碧山
勝って優勝戦線に残りたい両者。
髙安は左から追っ付けながら前に圧力をかけ、碧山の突っ張りを防ぎながら攻めていく。しかし、碧山の叩き込みに足がついていかず、土俵にバッタリ。
賜杯に望みをつないだのは、9日目から7連勝で11勝目を挙げた碧山。
敗れた髙安は一時2差の単独トップに立ちながら、まさかの終盤3連敗で優勝争いから脱落。
貴景勝 ー 照ノ富士
勝てば優勝の照ノ富士。まずは勝って巴戦に持ち込みたい貴景勝。
立合いで右の腕をたぐりにいった照ノ富士だが、貴景勝の突っ張りがしっかり伸びたためすっぽ抜けてしまう。貴景勝は突き押しで押し込んでいくが、照ノ富士は前傾姿勢を崩さずに踏ん張って凌ぐ。
照ノ富士は組み止めようと右を差したが、大関は差し手を小手に巻いて振り回す。
しかしその小手投げによって相手を呼び込んでしまい、土俵際まで追い込まれた貴景勝は、照ノ富士の突き押しを残せずに押し出し。
照ノ富士が本割の一発で優勝を決め、西序二段48枚目から大関返り咲きの偉業を、3回目の優勝で飾った。
結びの一番で正代は朝乃山に上手投げで敗れ、7勝8敗。来場所カド番となった。
総括
【優勝】 関脇・照ノ富士 春雄(3回目)
照ノ富士が12勝3敗で、4場所ぶり3回目の優勝。 春場所での優勝は初。
【三賞】
《技能賞》
2大関(3日目:貴景勝、5日目:正代)や、正代を倒した若隆景(初)。
《殊勲賞》
照ノ富士(3回目)。
《敢闘賞》
2大関(6日目:正代、7日目:貴景勝)を倒した明生(初)。
11勝を挙げ、千秋楽まで優勝争いを演じた碧山(4回目)。
なお理事会における満場一致の決定により、直近3場所で36勝を挙げた関脇・照ノ富士が大関へ再昇進。
来場所は、
大関・正代、カド番。
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